
輝かしい五月と炎暑の七月に挟まれたこの月は、どこか曖昧な印象。黒南風と称する雨気を含んだ陰湿な風が吹いて、入梅の知らせが南から北上して、日本全土を包みます。しかし麦秋から一気に田植えの最盛期に入り、天と地から育つ様は、姿は、見事な眺めでもあります。緑はいっそう色を濃く、恵みの雨に詩情あふれる様を呈します。
六月を綺麗な風の吹くことよ ?正岡子規?
毎年いただく、美しい花々の描かれた誕生日カードに、こう添え書きがあります。
「美しい季節にお生まれの貴女さまに、神様の祝福がありますように…」と。誕生日には、母の好物をそなえ、香を手向けるのが、私の毎年の習わし。そして、母へ感謝の言葉を発し、静かにつかの間過ごします。和服も歌舞伎も邦楽、茶道、俳句も母の影響です。美しい縞のきもので小学校の参観日に、遠足の付き添いにと出向いてくれました。
歌舞伎役者の団十郎や菊五郎のはなしを楽しく聞かせてくれ、一緒に歌舞伎を楽しみました。今も時折、母の声が聞こえてきます。「いくつになったの?」と、まだまだ母の歳までは時間があります。たくさんのリスクを背負って私を生んでくれた母。たった一つしかないこの身体です。年々思いの深まる今、だからこそ精一杯…と。
私と同じ様に誕生日を迎えた女の子が身近にいます。彼女は3歳のお祝い。バースディケーキのついたピンクのシャツを着て、なんとかわいいのでしょう…!母と子の姿を見ていると、大切に大切に愛情をそそがれて、母親は彼女の手・足となって、月日を重ねています。下に2ヶ月になる妹もいますので、身を粉にして無償の愛を…そそぎます。その姿を見るにつけ、一人で大きくなったのではない… わかっているのに…と、10代の自分を思い出します。
「かの時の言いそびれたる大切の言葉は今も胸に残りて…」 ?石川啄木?
六月は、誕生日が近づくと、母をことさら想う月でもあります。愛いっぱいで私を輝かせてくれました。今は自らを輝かせることを…と。
マナーの心は相手を思いやる心からお相手を輝かせます。ご一緒することで、また束の間、たった一言かもしれません。もう一度ご一緒したい、もっと言葉を交わしたい…とお相手は、ご自分を輝かせ、心を弾ませるのです。そしてまわりをも輝かせるはずです。この美しい愛の女神に守られた六月が、たくさんの恵みに…と思いがつのります。
冠婚葬祭マナーコンシェルジェの日記 作者 いしいようこ カテゴリー マナー心
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フォト : くちなしの花