
利休が追い求めた美学は、己の死を賭けた美学であった。利休は、茶の湯の簡素化に努め精神的充足を追求した師、武野紹鴎の教えを更に進め、これ以上何も削れないという極限まで無駄を省いて侘び茶を大成させた。弟子に茶の湯の神髄を問われて、「茶は服の良き様に点て、炭は湯の沸く様に置き、冬は暖かに夏は涼しく、花は野の花の様に生け、刻限は早めに、降らずとも雨の用意、相客に心せよ」と返し、このような当たり前のことこそが最も難しいと弟子に諭した利休。
茶の湯と利休を重用した秀吉が、茶の湯の権威のために秘伝の作法を作った折には、秘伝などという作法は重要ではなく、茶の湯の重要な一番の極意は「自由と個性なり」と言い放った。
利休は秀吉に「朝顔が美しいので茶会に来ませんか」と使いを出し、秀吉が庭の満開の朝顔を楽しみにやって来ると、庭の朝顔はすべて切り取られてひとつもない。秀吉が茶室に入ると、床の間に一輪だけ朝顔が生けてあった。際立つ一輪の朝顔の美しさ。
秀吉が好んだのは、壁も茶器も金ぴかの「黄金の茶室」。利休が設計した二畳敷きの茶室「待庵」は、限界まで無駄を削ぎ落とした究極の茶室。にじり口は間口が狭く低位置にあり、頭を下げて這う様な形にならないと中に入れない。また武士の魂である刀を外さなければつっかえてくぐれない。それは天下人である秀吉も同じで、茶室に入れば人間の身分に上下はなく、平等の存在になるということだ。
主人と客がお互いを尊敬し合い、おごらない気持で接するという「和敬静寂」の考えで天下人秀吉と対等の立場を取ろうとした利休の魂は、今も生きている。
PS.利休は、天正19年、享年70才にて没す。裏千家では、利休忌が毎年3月28日に行われている。現在、大河ドラマ「江」に宗易(石坂浩二扮する)として、茶の指南をしている姿が登場である。天下人、信長、秀吉に茶の道を説いた人物である。 Rainbow
冠婚葬祭マナーコンシェルジェの日記 作者 Marin カテゴリー おもてなし心
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フォト : 二畳敷きの茶室「待庵」